VOICES FROM VOLUNTEERS
目黒区在住
70才 男性
『治験のカベと新しい出会い』
治験には越すに越されぬカベがある。しかしそのカベの向こうには、新しい友情とリフレッシュされた自分との出会いがある。今回、高齢者を対象とする第1相治験(健康人を対象とする臨床検査)に参加する機会を与えられたが、余りに長期間の病院滞在であったので、多分、中途挫折などを懸念しながらの参加であったが、NPO法人ニューイングの皆さんの行き届いたご配慮と、日本最大級といわれている治験施設の治験コーディネーターをはじめスタッフの方々の真摯なご努力のお陰で、終わってみれば、12人の治験仲間の新しい友情と、毎日、分単位の体調管理(体重・血液・血圧・体温・心電図・尿検査など)のお陰で、一段とスリムな健康体を手に入れることができたことに心から深く感謝を申上げたいと思います。
それにも拘らず、一般に、第1相治験に参加する3つのカベが厳然と存在する。
第1のカベは健康体のカベだ。しかし、単に病気でない、だけでは参加できないのだ。血圧・血液・心電図・体温・尿検査のすべてが超健康でなければならないことは勿論だが、今回、特に、ヤバかったのは、BMIのカベであった。BMIが25以下でないと参加できないのだ。身長166cmで約70kgなので基準値オーバー。そこで、はじめての減量だ。幸い、玄米と野菜と運動のお陰で約65kgまで落とすことができた。
第2のカベは家族のカベだ。折角、今日まで健康に恵まれてきたのに、老齢になって、なぜ、わざわざ危険に身をさらすのか、という一見尤もな妻や娘の反対。これは、治験参加者が一様に経験することで、中には書類を捨てられたり、伝言をしてもらえなかったりした人もいる。私の場合は、治験はいつでも止められるので、更に中身の説明をよく理解した上で、再度、最終判断をする、ということで取敢えずクリア。
第3のカベは仕事のカベだ。会社の主要メンバーとして、17日も仕事を抛りだすことは不可能だ。しかし、いずれは引退の時期がくる。後事を託す訓練の稀有なチャンスと思えばいい。
これらの3つの高いカベをのり越え、いよいよ病院滞在が始まり、家族から離れて初めて寮生活をする新入生のようなうきうきした気分で、諸々の検査漬けの合間には、碁を打ったり、お互いの戦後を語りあったりした17日間は、あっと過ぎてしまい、今後の末永い友情と連帯を誓い合え、無事治験を終了することができた。本当にありがとうございました。