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Oct
30
2023
女優の仲間由紀恵さん出演のテレビコマーシャルですっかり有名になった株式会社HIROTSUバイオサイエンスの「N-NOSE」というがん検査キットは、自宅で尿を採取し体長約1mmの線虫を使ってがんのリスクを簡単にリーズナブルに調べるというものです。
一般的ながん検診は1つのがんにしか対応していませんが、15種類のがんのリスクを高精度に調べられると宣伝しています。検査に使う線虫はがん患者の尿に近寄り、健康な人の尿からは逃げる性質があるとされていますが、6月の日本がん検診・診断学会においては、有効性に疑問があるという発表もあり、日本核医学会のワーキンググループなどのチームが実態調査を始めているとのことです。線虫検査で陽性や陰性だった人のその後のPET検査などで実際に見つかったがんの種類や進行度などをみて、線虫検査の精度を検証するということです。
因みに「N-NOSE」のホームページを見ると「N-NOSE」で線虫の反応が確認されている15種類のがん種として下記のがん種があげられています。
口腔・咽頭がん、食道がん、肺がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、すい臓がん、胆のうがん、胆管がん、大腸がん、腎臓がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん。
また、同ホームページによると線虫は、非常に微細ながん細胞の匂いにも反応する為、一般的ながん検査でがんを発見できる大きさになるより前から反応するということなのですが、あまりに早期がんの段階で線虫検査をして、陽性だった場合どうしたら良いのか心配になります。15種類のうちどのがんになっているのかまではわからないのですから、この後様々な診療科へ行って検査を受けることになるのでしょうか?どこにも自覚症状がない場合、線虫検査の結果がリスク有りだったのでどこかのがんだと思うと言うことで健康保険は使えるのでしょうか?がん細胞が一般的な検査で発見されるほど成長するまで、がんの確定診断を得られないし、治療も開始できないのではないかと思い気になります。また、この製品が治験を実施して国から製造販売の承認を得ているものではない事も気になります。
一方で、少量の血液を調べることでがんを検出するMCED検査の大規模研究が国立がん研究センターを中心におこなわれています。がん細胞からはさまざまな種類のマイクロRNA(核酸の一種)が分泌されていて血液に交じって体を循環しています。その為少量の血液を調べることで、がんを検出できると考えられており、予備研究では13種類のがんが検出されています。
現在行われている大規模研究では、血液検査による簡便で精度の高い乳がんの早期発見の開発を目指して、全国4道県(愛媛県、鹿児島県、北海道、福井県)の日本対がん協会各支部で乳がん検診を受ける方に協力してもらい3000人の血液検体を集めて、がん等の疾患にともなって種類や量が変動することが明らかになっている血液中のマイクロRNAを測定します。この測定には予備研究で開発された診断モデルと検出技術が用いられ、実際のがん検診で応用できるかどうか検証します。今後13種類の一つひとつのがんについて精度を検証していく必要があるとの考えから、まずは検出方法の開発が先行している乳がんを対象に実施されています。
血液検査によるがん検診の精度を検証するためには、多くの人々が協力する必要があります。もし血液検査によるがん検診が、今行われている検診と同じような精度だったら、検診のためのX線の被ばくもなくすことができますし、採血だけですむならば長時間医療機関に滞在する必要もなくなりますね。血液検査によるがん検診があたりまえになる日がくることを大いに期待しています。