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Aug
23
2023
今までも認知症に対して処方されるお薬はありました。
例えばエーザイの「ドネペジル」(一般名:アリセプト)は軽度から重度の認知症に、ヤンセンファーマの「ガランタミン」(一般名:レミニール)は軽度から中等度の認知症に保険適用されています。
これら従来の認知症治療薬は、コリンエステラーゼ阻害薬といい、「アセチルコリン」を分解する酵素をはたらかなくすることで、アセチルコリンのシナプス濃度を高める薬剤です。アルツハイマー型認知症では、アセチルコリンを産生し大脳皮質や海馬に届けている神経細胞が減ってくるため、コリンエステラーゼ阻害薬でアセチルコリンを増やし、脳内の神経細胞の活動を活性化することで、一時的な認知機能の向上を狙うというものです。但し根本的な治療薬ではないので飲み続けていても認知症そのものが治るわけではなく、進行を遅らせたり、一時的な症状改善を目的としたものです。
今回承認された認知症治療薬「レカネマブ」は、前出の従来の認知症治療薬とは作用の仕方がまったく異なります。最近の研究で、アルツハイマー型認知症の原因は、脳内にアミロイドβ(Aβ)という老廃物が溜まってくることで発症すると言われており、「レカネマブ」は脳内に溜まった認知症の原因物質であるそのアミロイドβ(Aβ)を直接除去するものです。「レカネマブ」を早期の軽度認知症のうちに投与することで、アルツハイマー型認知症が進行していく事や、もの忘れの症状がひどくなることを抑えるというお薬です。
■では、認知症治療薬「レカネマブ」はすぐにでも使えるの?
まずはお薬の価格を決めてから・・・
お薬の価格は製造販売が承認されてから、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が、保険適用の可否を判断した上で決定します。通常は製造販売承認より原則60日から90日ほどかかります。そのことからも早くて今年の末あたりから処方可能になると言われています。
■では、処方が可能になったら誰でも使えるの?
このお薬の対象になるかどうかの診断が必要・・・
もの忘れの原因は様々です。アルツハイマー型認知症でなくても、認知症の症状がある場合があります。まずは早期のアルツハイマー病による「軽度認知障害」(MCI)の段階か「軽度認知症」の段階であるという診断を受ける事が重要です。
また、脳内にアミロイドβ(Aβ)が蓄積していることが条件になります。脳内にアミロイドβ(Aβ)が蓄積しているかどうかは、現在のところ、脳脊髄液検査(CSF検査)かアミロイド陽電子放射断層撮影(PET)検査で診断します。しかし現在は保険適応されない事と、検査をしてその結果を読み診断ができる病院が限られているという問題があります。
■では、レカネマブを使ったら認知症が治ってしまうの?
レカネマブは、アルツハイマー病の患者さんの脳に蓄積するアミロイド β(Aβ)を除去することで脳の損傷をおさえて、病気の進行を緩やかにする薬です。低下した認知機能を元に戻すものではありません。
■レカネマブの治験はどんなふうに行わたのか?
ニューイングでも数多くの「アルツハイマー型認知症治療薬」の開発に関する治験についてご協力いただける方を募集してきました。実際にどのような治験が行われているのかは、機密保持の義務がある為お知らせすることはできないので、レカネマブの治験について実際にどのような治験が実施されたのかをインターネットで検索してみました。
たいへんわかりやすく説明されているホームページを見つけましたので一部抜粋して掲載します。
ホームページのURLも記載しますのでご興味がある方はぜひご覧ください。
「(前略)レカネマブの治験(第Ⅲ相ランダム化比較試験)では、日本を含んだアジア・北アメリカ・ヨーロッパの235施設が参加。対象は、50〜90歳で、脳のアミロイドβが確認された早期アルツハイマー病の人。参加者1,795人を2つのグループ、薬・レカネマブを投与するグループと、体に害のない生理食塩水を投与する偽薬のグループにわけ、2週ごとに1回点滴し、それを18か月続けました。
この対象の条件にある早期アルツハイマー病を、アルツハイマー病がどう進んでいくかを表した図でみてみます。アルツハイマー病では、10年20年という長い年月をかけて、図で示したように脳の中にアミロイドβが蓄積されるのですが、それと同時に、認知機能が低下し、ある時点で、日常生活に支障をきたす「認知症」になります。早期アルツハイマー病というのは、「認知症を発症」してから数年ぐらいまでの「軽度アルツハイマー病」と、その前の段階の「軽度認知障害(MCI)」のことを指します。
薬の効果はどうだったのでしょうか?まず、薬を投与したグループと生理食塩水の偽薬グループで、症状の変化の程度を比べました。具体的には、記憶・判断力・地域社会で活動できているか、身だしなみがきちんとしているかなどを、診察と介助者からの情報で点数化。グラフの下に行くほど、症状が悪化したことを示しています。18か月経過した時点で比べてみると、偽薬のグループより、レカネマブのグループは、症状が悪化しなかったことがみてとれます。薬は、症状の悪化を27%抑制できました。研究に参加し、論文執筆メンバーの一人、東京大学大学院岩坪教授にお話を伺ったところ、「症状の悪化のスピードを遅らせる薬の効果が示された」とのことでした。例えば、18か月の時点で薬を投与した人の症状と同じぐらいの症状は、偽薬のグループでみると12か月ぐらいたったころです。つまり、薬を投与した方が、投与から18か月の時点では、大体6か月分くらい、進行が遅くなっていることがわかるかと思います。
また薬の効果として、脳にたまっていたアミロイドβが減少したことがわかりました。PETという脳の働きを調べる装置で撮影した脳の断面画像で、脳の中にたまったアミロイドβをみてみます。投与前、色が黄色・緑など明るくなっている部分が、アミロイドがたまっている部分です。投与18か月後は、明るい部分が減り、アミロイドが除去され、減少していることがわかります。
さらに、薬の効果として、介護者・家族に評価してもらう指標でみてみると、患者の歩行・排せつ・食事・着替え・入浴などの日常生活が改善していることもわかりました。(後略)」
NHK解説員会ホームページ
アルツハイマー治療薬 レカネマブの効果と副作用は?
2022年12月22日(木)矢島 ゆき子 解説委員 より引用
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/477773.html
(この投稿はNPO法人ニューイングが、webや書籍から収集した情報をもとに執筆しているものです。正確性に欠ける可能性もございますので、ご自身の疾患や症状などで気になることがあった場合にはかかりつけ医やお近くの医療機関を受診してください。)
新しい認知症治療薬の開発は今後も続いていきます。
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